小麦粉の製造過程
小麦は米とは違って外皮が堅く、玄米でおこなう精米行程では小麦の外皮は取り除けません。 小麦を粉にするには、まず小麦に適当な湿り気を与えてロールにかけ、粗挽きにしてからシフターにかけて選別します。 胚芽だけの部分は柔らかくて細かくなり易くシフターの目を通りますが、外皮を含んでいる部分は堅くて荒く、再びロールに戻されて砕かれ、シフターにかけられ外皮を取り除きながら細かくされていきます。 シフターを通った胚芽部分は滑面ロール機にかけられて順次微粉化されて等級別に分けられていきます。 ふつう一種類の小麦から数十種類の等級粉に分けられます。 小麦粉の分類小麦は生産地により、また品種により多くの種類があり性質も異なります。また製粉工程中の取り分け方によっても分類されて各等級がつけられていきます。お菓子を作る上で大切なものは、小麦粉の等級とグルテンの質と量を理解しておかなければなりません。 グルテン含有量による分類
小麦粉の主成分は澱粉ですが、小麦粉の優劣をきめるのはこれに含まれる糖質と蛋白質の量と質です。 小麦粉の蛋白質はグルテニン、グリアジンが主成分で、そのほかアルブミン、グロブリン、プロテオースなどからなっていますが、グリアジン、グルテニンが80%を占めています。 グルテニンは弾力に富みますが粘着力は弱く、逆にグリアジンは弾力は弱いが粘着力が強くて伸びやすい性質を持っています。この異なる性質の蛋白質が結びつくと、両方の性質(粘着性と弾性)を適度に兼ね備えたグルテンになるのです。 このグリアジン、グルテニンの混同物をグルテンといい、グルテンは小麦粉のみに存在するもので、これの扱い方次第で菓子の出来不出来が決まります。またグルテニンとグリアジンの比率や分子構造によっても、粘着力が強かったり、弾力が強かったりすることがあります 小麦粉の種類はグルテンの量によっても分けられ、 強力粉(グルテン含有量21%以上)、 中力粉(グルテン含有9〜11%)、 薄力粉(グルテン含有8.5%以下) に分類されています。 また同じグルテン含有量のものでも小麦粉特性(産地・品種・生育状態などの小麦粉品質)によっても使用目的が分けられ、高級パン・菓子に用いられる特等粉や、駄菓子あるいは麩の原料とされる二等粉、糊の原料となる三等粉といった分けられ方もされます。 製粉工程中の取り分け方による分類
先述のグルテンによる分類とは別に、一般には聞き慣れない「特等粉」、「一等粉」、「二等粉」、「三等粉」、最下品の「末粉」とよばれる分け方もあります。最上級の「特等粉」は小麦の中心部(胚乳部)が多く含まれ、品質の悪いものほど外皮や胚芽の混入が多いものです。 以上のように小麦粉の強力・薄力あるいは等級区分は多種多様ですが、製品目的に応じた適切な小麦粉を選ぶことが大切です。 使用目的による分類=品質による分類
いまの製粉メーカは、使用目的別(例えばパン専用粉・ケーキ専用粉・製麺用など)に小麦粉本来の品質を細かく分けて販売するようになっています。 小麦粉の選択には、強力・薄力あるいは等級による分類上の区分はもちろん大切ではあるが、小麦粉の品質別に選ぶほうがより大切です。 品質を吟味する大切さはパン製造に顕著に表れます。 パンに用いる小麦粉には、蛋白質の量が多くて、粘性と弾性のバランスが良いものが要求される。同じアメリカ産の硬質小麦でも、ハ−ド・レッド・スプリング小麦の方がハード・レッド・ウィンター小麦よりパンとして優れていると言われているのは、グルテンの粘性・弾性のバランスがパンに向いているからなのです。アルゼンチン産小麦が蛋白質の量は多いのに日本のパンに向かない理由は、グルテンが弾性が強くても粘性の方が弱いからなのです。 最近の研究でも、グルテニンの分子構造の違いによりパンの品質に差が生ずることが分かってきております。 グルテンの粘性を弱くする−1− (寝かす)
グルテンが出過ぎた生地をねかしておくと、生地の弾力が弱くなり、のばしやすい生地になります。これは、強引に結合されたグルテン組織がほぐされて、ゆるむ結果生地の弾性が弱くなるからです。 パンやうどん、或いはパイ等を作る時にかなり強引に生地を捏ねつけたり延ばしたりしますね、生地をねかせるのはこの工程で生じた弾力を弱くして、生地を伸ばしやすくし次の工程をしやすくするためなのです。当然グルテンの弾性が強いもの程、寝かす時間も長い時間が必要です。 グルテンの粘性を弱くする−2− (配合を変える)小麦粉はグルテン量により粘性に強弱があるから、小麦粉以外の澱粉(浮き粉・上新粉・片栗粉・コーンスターチなど)を加えることによって、粘性を変えることができる。ただし、100%小麦粉使用のものとは、かなり味覚・食感が異なることは否めない。 グルテンの粘性を強化あるいは壊す
グルテンの粘性を強化する 塩はグルテンの弾性を強くするには、捏ねつけたり延ばしたりすることで可能ですが、小麦粉の1〜2%程度の塩を加えることによって、粘性が強化されることは周知のことです。 (パン生地に強い粘性を出す場合等に利用しますが、多量に加えると味覚・発酵に影響が出るので注意が必要です。) グルテンの粘性を弱くする 油脂はグルテン粘性を破壊する。 バターやマーガリンはすでに生成されているグルテン結合組織に入り込み、ほぐしバラバラにし粘性を弱くしますし、壊すこともできます。 また初期の段階から油脂を加えておくと、油脂が蛋白質の結合を阻止しグルテンは形成されず粘性は出来ません。 これからも分かるように、フルーツケーキのような粘性を出したくないお菓子には、最初から油脂を加えておき、パン生地のようにグルテン形成が必要な場合には、粘性が形成されてから油脂を加える必要があります。 小麦粉の粒子
同じ小麦粉でも、グルテン含有量の多い硬質小麦(強力粉に利用)と、グルテン含有量の少ない軟質小麦(薄力粉に利用)とでは、粉になった時の粒子の大きさが異なるものです。 これはタンパク質が多いものほど粒子結合が強く、製粉されるときでも細かく壊れずに粒子は大きなままに仕上がります。(強力粉) これとは反対にタンパク質の少ない小麦の場合には、細胞の粒子は離れやすく製粉時での粒子破片は非常に細かく仕上がります。(薄力粉) でんぷんの粒の大きさは、軟質小麦・硬質小麦の種類毎により次のようになっています。 薄力粉(細かい)<中力粉<強力粉(粗い) 注意すべきことは、単に薄力粉だから全て細かく、強力粉だから全て粗いというわけではありません。 薄力粉にも粗い粒を含みますし、強力粉にも極細かい粒を含みます。薄力粉では、極細かい粒の割合が大きいというに過ぎません。 技術者として気をつけること
製品を作る上では前述のような小麦粉特性を熟知しなければならないが、単に強力粉、中力粉、薄力粉の蛋白質(グルテン)だけで決められるものではなく、それらの品質も大切です。 さらには二次加工適性(手または機械による混合適正・ベンチタイム・焼く・蒸す・煮るなどの製造適正)にあったものを選ぶ必要があります。 例えば同じ小麦粉で蛋白質等の分析値が同じでも、元となる原料小麦が異なると二次加工適性も違ってきます。従って、強力粉と薄力粉を混ぜ中力粉と同じ数値にすることは可能だが、二次加工適性や品質は同じになるとはいえません。 使用に際して目的にあった小麦粉を使うように心掛けるべきです。 小麦粉澱粉(浮き粉)
小麦澱粉を製造するには、発酵法と非発酵法とがあります。
発酵法は、小麦を水に一定時間浸漬してから磨砕し、水を加えてよく撹絆し、粥状として発酵液をつくり、これを発酵(腐敗)させると蛋白質は溶解して澱粉と分離しやすい状態となります。これから澱粉を分離沈澱させる方法でつくられますが、この方法はグルテンを無駄にするのと、環境への配慮から処理水浄化にコストが掛かる欠点があるので今では非発酵法が用いられています。 非発酵法では原料に小麦粉を用い、これに水を加え捏煉機でよく捏ねゴム状にします。これを多量の水と洗出機を用いて澱粉を洗い流しグルテンと小麦澱粉とに分離し、澱粉は、さらに沈澱法により精製後乾燥されて小麦澱粉となります。 参考:海外の小麦粉事情
原料の小麦の品質と製粉の仕方が国や地域 によって違うからです。 日本で入手できる小麦粉との違いを分かった上で、他の材料 との配合比を変えたり、作り方を工夫することも必要になるでしょう。 |