工程と質問
私も駿河屋さんの和菓子レシピに導かれつつ、以前よりも美味しいあんを作ることが出来るようになり、とてもとても感謝いたしております。
何年もの悩みを思い切って駿河屋さんにお尋ねさせて戴きます。
柏餅について
上新粉 200gをぬるま湯(40度位)でパン生地くらいの堅さに仕上げ、布巾を敷いた蒸し器に入れて15分間蒸しました。
蒸し上がれば直ぐに滑らかになるまでしっかりと捏ねました。堅さは餡が包みやすい位にお湯で調整しながら仕上げました。
ここまでは間違っていないと思っているのですが、如何でしょうか。この生地であんこを包み終え駿河屋さんのレシピにも書いてあるように二度蒸しをしました。
この二度蒸しをするようになってからは、味も向上して喜んでいるのですが、今一歯ごたえが向上せず悩んでいます。
皆からは後一歩だねと言われるのですが、どうすればお菓子屋さんで売られているようなしっかりとした生地に仕上がりません。
この季節になるといつも悩んでいます、、、、思い切って駿河屋さんにお尋ねさせていただきました。
また、柏餅や新粉ダンゴの生地は、練り方や煉り水の温度、水分量などで冷めたときの硬さや歯ごたえに変化がでますか?
よろしくお願いいたします。
<プロからのアドバイス>
> 今一歯ごたえが向上せず悩んでいます。
補助材料(片栗粉、小麦粉、浮き粉など)を加えずに、米の粉だけで仕上げようとされる姿勢には感心致しました。
歯ごたえを良くするにはそれなりの工夫が必要ですね・・・・
【アドバイス】
柏餅のシーズンになりましたね、返事が遅くなり申し訳ございません。
生地の歯ごたえがもう一つ・・・・といったご質問がたいへん多いですね、それだけ皆さんの味への追求がシビアになってきたと言うことですね。
プロにとって脅威を感じますが、プロのプライドに掛けてさらに技を磨いてまいります。
さて柏餅の生地に限らず米粉や餅粉生地などの穀粉全てに当てはまりますが、蒸気の質や使用する蒸し容器の環境で、仕上がりもかなり違ってきます。
和菓子店レベルの生地に仕上げるには、家庭用の蒸し器とコンロでは無理があります。特に中華蒸し器(篭)は新粉生地にはまったく適していません。
これら簡易蒸し器では、蒸気量と圧力不足(このため蒸気温度が低すぎ)のために、歯ごたえのあるシコっとした生地にならないのです。
ご家庭蒸し器は、茶碗蒸しなどの料理に用いるものが多いのですが、これらは水量も少なく加圧性能も弱いために、必要以上に時間をかけて蒸さなければなりません。この結果歯ごたえの悪い生地となってしまいます。
うるち米や餅米全般に言えることですが、これら穀粉は高圧下で充分な蒸気量で素早く蒸されることにより米本来の風味が活かされるのです。
反対に充分な蒸気量が得られない低圧蒸気でだらだらと蒸された生地は素材本来の味も生まれてきません。
<ご家庭で出来る工夫>
しかし工夫次第ではある程度まで改良できますし、今以上に良い仕上がりに近づけることは可能です。
上記の理由で、中華用の蒸し篭は新粉生地には不向きですが、ポイントは蒸気圧が充分に得られれば良い訳で、多めの水量に見合った充分な火力で蒸気を発生させ、密封性を高めて蒸し器の内圧を高める工夫があれば良いわけです。このような工夫をする事で蒸し時間を短縮することが可能になり、米粉本来の風味を引き出せるのです。
さらに工夫すべきことは、生地の蒸時間を短縮する工夫として、冷たい水で生地を捏ねるよりも、45℃くらいのお湯で生地を作り蒸し時間の短縮化を考えるべきですね・・・。
これでも無理ならば生地の歯ごたえを強める工夫として補助材料(片栗粉、小麦粉、浮き粉などの澱粉類)を、新粉の5〜10%加えることで解決できます。
但し補助材料を加えたものは、本来の物とは味も異なって参りますが・・・・
Web上や市販のレシピでは、歯ごたえを良くするために片栗粉や小麦粉、浮き粉を加えることで、この欠点を補おうとしている訳がここにあります。
高級和菓子店が
「厚手の国産檜材せいろ」を使用する訳
充分な水蒸気量と高圧力とでは矛盾する要素ですが、樹脂製や金属の蒸し器では水分を含まない材質のため乾燥気味となりこの矛盾を解決出来ません、これを解決するためには国産檜材を使用した厚手の木製せいろと重し蓋が必須となります。中華蒸し篭では乾燥はふさげるのですか圧力不足が致命的となり、米が持つ本来の風味を逃し歯ごたえの良い生地には仕上がりません。
国産檜で作った厚手の木製せいろと重し蓋にはそれなりの理由が有るわけです。
> また、柏餅や新粉ダンゴの生地は、練り方や煉り水の温度、水分量などで冷めたときの硬さや歯ごたえに変化がでますか?
【アドバイス】
生地に少しの砂糖を入れると滑らかさが出ますのでおためし下さい。また日持ちも半日くらいは柔らかさが保てますので良いですよ。
上新粉 200g
ぬるま湯(40度位)
砂糖 40g
仰せの通り、練り方や水分量、温度により仕上がりにかなりの差が出てしまいます。
仕上がった結果から次回の参考にすると言った、失敗から學ぶ姿勢が大切ですね。
お役に立てたでしようか・・・・
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回答へのお返事
> 蒸し器で味が変わるなんて知りませんでした。私はごく普通の蒸し器を使用していますが、ふんわりとした程度の蒸気です。
> これが原因で長年悩み続けていたのですね。。思い当たることばかりです。
> 今度は蓋がぴったりしまるように布巾を挟さむなどして強火で蒸す工夫をして挑戦します。
> こんなにも丁寧なアドバイスを頂けれるだなんて、思っても見ませんでした、
> 今年の柏餅は皆からもきっとほめられると思いますよ、ワクワクしています。
> 駿河屋さまのお菓子への情熱が伝わってまいります、ほんとうに有り難うございました。
これ以外にも多く頂いたご質問:
1.すごいページですね、感動してしまいました。わたしも柏餅が早く堅くなってしまい悩んでいたのですが、このページを参考に蒸し方を工夫してから味も良くなり喜んでいます。
出来れば作ってから次の日も柔らかい かしわ餅の作り方を教えて下さい。
2.菓子質問のコーナーを拝見しました。翌日でも軟らかい柏餅の配合はありますか?
いつも沢山作って配っていますが、もう少し柔らかさか日持ちする工夫を教えて下さい。
3.翌日でも口当たりの良い保存方法などありましたら教えてください。
アドバイス
残念ながら、柏餅本来の風味を維持したまま、日持ちさせる方法はありません。
柏餅の生地自体には砂糖が殆ど入らず、逆に中の餡(小豆餡・味噌餡)にはかなりの糖分が含まれています。この極端なまでの落差があるからこそ柏餅が美味しい所以です。
逆にこの落差が大きいが故に、生地中の水分移動が時間とともに進み、皮が固くなり中餡はベタベタ状態になるのです。
どうしても日持ちさせたい方へ・・・
1.柏餅本来の風味を無視するならば日持ちさせることは可能です。生地に砂糖を加え中の餡と同じくらいの糖度にしてやれば2〜3日くらいは柔らかさを保つことは可能です。
上新粉 200g
ぬるま湯(40度位)
砂糖 100〜150g
砂糖が入る分生地を硬い目に仕上げる
2.水分移動をある程度押さえる。
生地の中に寒天や増年多糖類を加えることで、水分が保持されある程度の日持ちは可能となりますが風味は落ちてしまいます。
店主から
やはりお菓子は美味しくなければ作る意味がありませんね・・・
美味しいお菓子は人の心に喜びを、そして幸せな気分にしてくれます。私たち職業人はそのために努力を惜しみませんし惜しんではならないと思っています。
おいしいお菓子が出来れば、おいしい内に召し上がって戴きましょう、
本末転倒にならないように・・・・・